腰痛

監修:東京都リハビリテーション病院 院長 林 史 先生

腰痛について

腰痛は4本足の動物から進化し、2本足で立って歩くようになったときから始まったとされることから、人間の宿命だといわれています。 地面に対して垂直に立った人の背骨は、重たい頭や胴体など上半身にかかる重力のすべてを支えなければなりません。立っているだけでも腰に負担がかかっているのに、少し前屈の姿勢をとったり、重い物を持ったときなどは、さらに負担が大きくなります。このように、常に重力にさらされている背骨が、悲鳴を上げた状態が腰痛なのです。

腰痛のメカニズム

背骨は一本の長い骨ではなく、椎体や椎弓などで作られた短い椎骨24個が巧妙に連結して構成されています。これらを連結するクッションの役割を椎間板が果たしています。頭の方から7個の「頸椎」、12個の「胸椎」、5個の「腰椎」、そして「仙骨」と「尾骨」とに分類され、腰はこの「腰椎」部分になります。
腰は身体の要となる重要な部分です。座ったり、立ったり、歩いたりなど、ほとんどの行動は腰を起点に動きます。背骨はとても複雑な構造になっているため、どこかにちょっとしたヒズミが生じただけでも不調の原因となりやすいのです。
その悲鳴が腰痛というサインになって現れます。

腰痛のメカニズム

腰痛の主な種類

腰痛には、鈍痛が続く慢性的なタイプと、突然動けなくなるほどの激痛に襲われる急性的なタイプとがあります。
また、その原因も姿勢の悪さ、激しい運動や労働による疲労や損傷、老化、脊髄神経の異常、内臓や全身性疾患、心因性のストレスなどさまざまです。ここでは、腰痛の代表的な症状と原因についてご説明します。

慢性筋肉性腰痛症(一般的によくいわれる腰痛)

腰の骨を支える筋肉や靱帯(じんたい)に疲労がたまった状態です。軽い症状ならば、すぐに回復しますが、筋肉の疲労が積み重なると、腰の筋肉がこわばり、うっ血し鈍い痛みを常時感じるようになります。これが慢性筋肉性腰痛症です。

ぎっくり腰(突発性腰椎捻挫)

膝を曲げずに重い荷物や物を持ち上げたり、急に身体をねじったとき、あるいは十分な準備体操なしで激しい運動をするなど、腰に急な負担をかけたときに痛みを感じます。

痛みの直接の原因は、大きく分けて2つあります。まず、腰椎の周辺にある関節包や靱帯、筋肉、椎間板(椎骨にかかる衝撃を和らげるクッションのような役割を持つ軟骨)などを強く捻挫あるいは大きく損傷した場合。そして、老化や長期間の腰への負担がある状態で、ちょっとした無理な動作が引き金となって起こる場合、の2つがぎっくり腰による痛みです。

椎間板ヘルニア(腰椎椎間板ヘルニア)

椎間板ヘルニア(正式名称=腰椎椎間板ヘルニア)は、何らかの大きな外力により、腰椎部分の椎体と椎体の間にある椎間板に亀裂が入り、中の髄核が押し出され、それが脊髄神経(神経根)を圧迫するため、激しい痛みを感じる病気です。 痛みは腰だけでなく、臀部から足にかけてひどい痛みやしびれを感じる坐骨神経痛などの症状があり、筋力の低下などを起こすのが特徴です。また、ひどい場合は排尿ができなくなることもあります。
原因としては、背骨に負担をかけている日常生活(長時間の座り仕事や運転、運動など)、椎間板の老化(20歳を過ぎると徐々に老化)、姿勢の悪さからくる骨盤の歪みなどがある状態で、急に腰に大きな力が加わることにより生じます。

腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

腰部脊柱管狭窄症は、生まれつき脊柱管の狭い場合もありますが、椎間板や椎間関節の老化、変形などにより、脊柱管が狭くなり、脊柱管の中を通っている神経が圧迫されるために痛みやしびれが起こる病気です。40〜50代以上、特に高齢者に多くみられ、女性より男性にやや多いのが特徴です。

立って腰が伸びた状態で痛みやしびれが強く、背筋を伸ばして歩くと、腰から足の裏にかけて痛んだり、足のしびれを感じたり、足がもつれたりするというのが一般的な症状です。このような症状は朝や寒い季節に多く現れます。悪化すると、背中を丸めて寝ないと痛くて眠れなくなります。

変形性脊椎症

変形性脊椎症は、椎間板の老化から上下の脊椎の骨が変形したために起きます。
周囲の筋肉・靭帯も弱くなります。発症は一般に40歳以後で、若い頃から重労働に従事してきた人や激しいスポーツをしてきた人に多く見られます。

痛みの直接的な原因は、椎間関節の老化、椎間板症、脊椎体からの骨棘による圧迫などにより起こるものと考えられます。 腰椎を支える筋肉がこわばり、動作の時に痛みを感じますが、身体を動かしていると軽減してくるのが特徴です。しかし、疲れがたまると再び痛みが出てくるので、決して無理をしないことです。

その他の腰痛

転んだり、事故に遭うなどして、外部から衝撃を受けた後の腰の痛みには注意が必要です。特に高齢の人の場合、打撲だけだと思っていたのに、実は骨にヒビが入っていたり、骨折していたというケースもあります。安静にしていても痛むときや、患部に熱がある、痛みが長引くというような場合は整形外科の診察を受けることをおすすめします。

また、腰痛は腰そのものが悪くなくても、内臓などの疾患によって引き起こされることがあります。これらの痛みは、鈍痛となって慢性的に起こることがほとんどです。泌尿器科疾患などのほか、悪性腫瘍の転移など重い病気の可能性もありますから、腰痛が長引くときや、夜間寝ている時に痛みがひどくなるときは、軽い腰痛と見逃さず、医師の診察を受けましょう。

腰痛の対処法

つらい腰痛を少しでも和らげるために、痛みの症状に応じた対処法をご紹介します。

急性的な腰痛で、動けなくなったときの対処法

腰痛が出たら、腰に負担がかからないようにできるだけ横になりましょう。ただし、無理をして横になろうとせずに、少しずつゆっくりと動き、できる範囲で一番楽な体勢を取り、痛みが少し治まってから、ゆっくり身体を横にしていくとよいでしょう。このとき、腰の筋肉を使わない(腰を回さない、腰の部分を動かさない)ようにしましょう。

  • 腰に負担をかけないように
  • 楽な寝方でリラックスする
  • 腰の痛む部位を冷やす
  • コルセットやさらしをまく
  • 鎮痛薬を服用する

慢性的な腰痛の対処法

激痛ではないが、慢性的に腰が重たい、あるいは腰にだるさを感じる場合の対処法です。

  • 腰に負担をかけないように
  • 腰を温める
  • ゆっくり入浴する
  • ストレッチ
  • マッサージ、ツボ刺激

鎮痛薬で痛みを和らげる

痛みがあるのはつらいものです。鎮痛薬を飲んで少しでも痛みを軽くすれば、身体も大分楽になるのではないでしょうか。

鎮痛薬の上手な選び方

  • まずは、薬局の薬剤師さんに相談しましょう。
    医師に薬を処方してもらうのと同じように、ほかに使用している薬や合併症についても相談して、自分に合った薬を見つけましょう。

腰痛の予防法

毎日の何気ない姿勢や動作が慢性的な腰痛の原因になったり、急性の腰痛を引き起こす引き金になる場合があるので、日頃から注意が必要です。すでに腰痛のある人だけでなく、まだ大丈夫という人も、これから腰痛にならないための参考にしてください。

正しい姿勢を心掛ける

正しい姿勢をとり、腰に負担をかけないようにすることが重要です。

立ち方

  • 軽くアゴを引き、肩の力を抜き、腹筋に力を入れ、背筋、膝をキチンと伸ばします。
  • 真横から見た場合、耳から肩・股関節・膝・くるぶしを結んだ線が直線で描かれていることが一般的には良いとされています。

座り方

【イスに座る場合】

  • お尻が背もたれに密着するように、深く腰掛けてください。
  • 軽くアゴを引き、背筋を伸ばしてお腹を軽く引き締める。膝がお尻よりわずかに高くなるのが理想です。イスが高すぎる場合は、足を台にのせるなど膝の位置を調節します。

【床や畳に座る場合】

  • 一番腰に負担がかからないのは、背筋を伸ばして座る正座です。

寝るとき

十分リラックスできる姿勢が基本ですが、うつぶせの状態で寝ることだけは避
けましょう。 痛みがあるときは、横向きでやや前かがみ(横向きエビ)の姿勢で寝るのが一
般的に良い寝方といわれています。 仰向けに寝る場合は、膝の下に枕などを置いて寝ると腰の負担が軽くなります。 また、寝具にも気を使いましょう。(沈み込むような軟らかな寝具でないこと)

歩き方

前に出した足のかかとから着地し、足の親指で地面を蹴り、後ろ足は最後にかかとが離れるのが基本です。また、つま先を軽く開き、直線上を歩くように意識しましょう。 ※ 背中を丸めて歩いたり、身体を反らせ過ぎると腰に負担がかかりますから注意しましょう。

同じ姿勢を続けない

立ちっぱなしや運転など長時間同じ姿勢を続けるのは、腰に大きな負担をかけます。同じ姿勢を長時間続けないようにしましょう。時間を決めて歩いたり、イスから立ち上がったり、軽いストレッチをすると良いでしょう。

適度な運動を行う

移動で乗り物に頼ることが多い現代人は、筋力の低下を招き運動不足に陥りがちです。そのため、腰はとても弱くなっているのです。わずかな距離なら歩きましょう。
歩くことで、腰に大きな負担をかけずに筋肉を鍛えることができ、腰痛予防に効果的です。毎日のストレッチも効果的です。
腰痛予防のスポーツとしては、腰に負担がかからない水泳がおすすめです。

腰痛体操を行う

ストレッチで腰や下半身を柔軟にした後、上向きになって休み、無理のない範囲で顔、肩、上半身の順に持ち上げて腹筋を鍛えましょう。
続いて下向きになって休み、無理のない範囲で頭、肩、上半身を持ち上げ腰背筋を鍛えましょう。
それぞれ、持ち上げている時間は3〜5秒、初めは3〜5回、慣れれば朝夕10回ずつ。

腹筋、腰背筋を鍛えて筋肉で出来た専用コルセットを装備すれば腰痛は著しく減少します。

監修の先生について

史先生

東京都リハビリテーション病院 院長

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